2019.11.13

スタジオたね特別編 vol.5レポート

10月19日、第5回の特別編はいつものスタジオを飛び出し、児童文学「泣いた赤鬼」で有名な浜田広介記念館を会場に開催しました。ひろすけホールは天井が高い円形で内壁も床も全て木材で造られた素敵な場所。冒頭で置賜総合支庁井上宏彦総務企画部長より置賜文化フォーラムへの想いをこめたご挨拶の後、スタジオたねの取り組みについてもご紹介しました。

第一部、講師それぞれによる事例を元にしたスライドトークを行い全員で内容を共有した後、第二部は4グループに分かれて各講師との相談会を行いました。
各グループでは、事前に集めた質問票を元に課題を共有し、個別の対話や周りを巻き込んでの意見交換、スライドやホワイトボードを使っての説明など、各講師それぞれの進行を行いました。この第二部は予想通り時間延長。各々のグループで熱気を帯びたディスカッションが繰り広げられました。

第三部は、再び会場を一つにしてシェアと総括の時間。宮本氏のファシリテーションで各グループでどのような話題に焦点が当たったか、講師が感じた共通する課題などとても内容の濃いトークセッションとなりました。印象に残ったお話の一部をシェアします。

ローカルのものづくり:中川政七商店コミュミケーション本部 高倉泰氏
山形のものづくりにおける様々な悩みや情報を交換できる環境や横の繋がりが少ないと感じた。繋がる為には、作り手がまずは想いを言語化し発信する事が大切だと思う。中川政七商店は「日本の工芸を元気にする」というビジョンを掲げているが、価値観として「私たちには残したいものがある」という言葉を社内で共有した。この、社員一人ひとり自分ごとにできる言葉はとてもしっくりきていて行動にも変化が出ている。

ローカルとデザイン:UMA/design farm代表 原田祐馬氏
山形に限らず地方共通の話で、「ここには何もない」と謙遜する傾向がある。よそ者の自分からみれば「ある」のに「ない」という。この認識を打破するのは時間がかかるが大事な事。デザインをする前に何度も足を運んでコミュニケーションをとり関係づくりに時間をかけている。アートが動詞だとするとデザインは形容詞。なにか「と」なにかを繋ぐ、「と」の仕事。従来型のデザイン領域を意識せずトライしていきたい。

福祉とデザイン:九州大学専任講師 SOS子どもの村JAPAN 田北雅裕氏
児童福祉の現場で「このメディアをあの人が目にしていれば助けられたのに」という悔しさにぶつかった事がある。例えば相談窓口の電話番号を伝えるメディアのデザインは、番号を伝えるだけでなく、相談に至らない人を励ます役割も担う。そして、自分1人でできることではなく、できないことを発見した時、ローカルにおけるデザインの力になる。できないことがあるからこそ他者とつながり、コミュニティが育まれる。

街づくりとアート:角川文化振興財団クリエイティブディレクター 宮本武典氏
助成金が無くなるとプロジェクトが終わる不安についての話があった。プロジェクトは、どう終わらせるかを前提として始める事を意識している。一方「全ての人は前の人からボールをもらって次の人に回す役を持っている」という言葉にあるように、仕事も家庭も誰かから受け継ぎ渡すもの。時代の大きな変革の時で、多くのものが失われていくが、その中から継続させるものを見つけその為に生きるというテーマもある。ローカルでは世代間の繋がりが濃い利点を活かしていける。

第三部のトークセッションが終わり、閉会後すぐに会場を去る人がいない事に驚きました。参加者同士や講師とそれぞれ会話が続き、会場を去りがたい気持ちが伝わってとても嬉しく思いました。
天候が不安定な中、貴重な土曜日に時間を作り参加くださった皆様、前日の夜中まで資料を準備して福岡、奈良、大阪、群馬から来てくださった(!)超多忙の講師の方々が、置賜で出会う場を提供できて本当によかったです。

次回のスタジオたねは2020年予定です。ご期待くださいませ。