2024.01.01

2024.1.1
新フロットはじまる。
【トップインタビュー vol.6】

2024年1月1日付けで、田宮印刷株式会社(以下、旧田宮印刷)が、子会社の株式会社フロット(以下、旧フロット)を吸収合併し、商号を「株式会社フロット」に変更し、新フロットが誕生した。

新たな組織へと生まれ変わり、きょう新しい一歩を踏み出した新フロットについて、その体制から新しい組織にかける想いまでを、今回の変革をリードしてきた阿部和人 代表取締役に詳細に語っていただいた。

新フロットの組織体制について、お聞かせください。

阿部社長:「旧フロットは、企画営業部門とクリエイティブ部門の2部門からなる組織体制でした。新フロットは、企画営業部門と生産部門、サポート部門の3部門から組織構成されていた旧田宮印刷に、旧フロットのクリエイティブ部門が追加され、企画営業部門は一体化した組織体制となります。

新フロットは、マーケティングセクション・クリエイティブセクション・プロダクトセクション・サポートセクションの4つの部門から組織構成され、役員・社員含めて総勢95名で新たなスタートを切ります」


今回、新フロットを発足させた経緯や背景について、お聞かせください。

阿部社長:「13年前、全国的に印刷物が需要減少していく中で、印刷物にとらわれないマーケティング、プランニング、デザインで成長するクリエイティブな会社を目指して、旧田宮印刷から切り離す形で、旧田宮印刷の100%子会社として旧フロットを立ち上げました。

当初は旧田宮印刷と旧フロットの方向性は離れていくと予想していましたが、旧田宮印刷では旧フロットの強みを生かした営業活動が行われ、旧田宮印刷の強みである営業力・製造力と旧フロットのマーケティング力、プランニング力、デザイン力が、相乗効果を発揮できる場面が増えてきました。

こうした状況から、新たに一丸となれる体制を構築し、お客さま・マーケットが求めるマーケティング、プランニング、デジタルソリューション等をさらに強化していくために、旧田宮印刷が旧フロットを吸収合併して、組織強化を図ることにしました」


なぜ、いま、このタイミングで商号変更まで決断されたのでしょうか。

阿部社長:「印刷産業全体のピーク時の売上高は9兆円と言われおり、それが2022年度は3兆6,000億円とピーク時の半分以下となりました。AI予測では、今後5年間で2兆6,000万円にまで減少するという予測も出ています。

ここまで印刷需要が激減していく中にあって、『印刷』という看板を掲げていては、自社が多様なサービスを提供できるにもかかわらず、市場からは「印刷専門」「印刷しかできない」と認識されるでしょう。そこで『印刷』という看板を外そうと考えました。

こうした考えというのは、実は旧フロットを設立するよりも以前の今から15〜16年前から出ていたものでもありました。

そして、私の中では旧田宮印刷の印刷だけを外して、『TAMIYA』とする案もありましたが、旧田宮印刷の117年の歴史が「田宮と言えば、印刷会社」というマーケットでのイメージをつくり上げていましたので、印刷物製造の延長線と捉えられる可能性があるだけでなく、新しさが感じられないと判断しました。

また、まったく新しい社名の案もありました。しかし、まったく新しい社名では、マーケットが認知するまでに時間がかかりすぎると感じましたし、新社名では新しい組織が目指す方向性をうまく伝えることができないのではとも感じていました。

旧フロットには約4億弱の売上があり、その売上を構成するお客さまには『フロット』という商号が十分に浸透していましたし、旧田宮印刷のお客さまにおいても『フロット』という商号は広く認知されていました。特に旧フロットのお客さまは、旧田宮印刷への吸収合併後の新会社でも売上上位に入る大切なお客さまとなります。つまり、吸収合併後の商号のマーケット浸透がスムースであり、かつ最大限メリットがあり、事業の方向性がぼんやりと見えてくるのではないかと判断し、商号を「株式会社フロット」に変更するに至りました。

以前から『印刷』という看板に古さを感じていたものの、旧田宮印刷の歴史・伝統の重み、それに対する私自身の並々ならぬ愛社心でなかなか商号変更に踏み切ることができませんでしたが、約3年4カ月続いた新型コロナウィルス禍が大きなキッカケとなったことは確かです。ピンチはチャンスと誰もが言います。新型コロナウィルス禍の最中に「何がチャンスだ?」と、ずっと考えていました。世の中が変わった変わったと言われる中で、果たして自社は変わったのか。何も変わっていない。「そうか!いまが変わるチャンスなんだ」と……。「いつかは、田宮の名前を!と思い描いていたことが今なんだ」と……。旧田宮印刷による旧フロットの吸収合併、そして株式会社フロットへの商号変更、事業の新しい方向性への一歩、そのすべてが、新型コロナウィルス禍がくれた絶好のタイミングであり、絶好のチャンスだと思い至ったのです」


今回の統合を通して、どんな効果を期待し、またどんな展望を描いているのでしょうか。

阿部社長:「まず、良好なコミュニケーションが醸成されることを期待しています。この良好なコミュニケーションとは、役員も含め社員同士の親近感が向上し、そこから新会社(組織)への帰属意識が生まれ、ものづくりにおける部門を越えたお客さま本位のコミュニケーションが図られることを指します。昨年、印刷工場へ本社機能を移転し、全部門が一つの場所に集約されるたことで、これまでにないコミュニケーションが生まれ、目に見える効果が出はじめています。

次に居心地です。居心地が良くない場所で、仕事に対して気持ちがノルでしょうか? 良いアイディアが出せるでしょうか? 良い仕事ができるでしょうか? 少なからず家庭や自分の部屋は、自分なりに居心地良くなる工夫をしているはずです。昨年、印刷工場へ本社機能を移転して以降、営業部門を皮切りにそうした意識が徐々に浸透しはじめており、各部門の社員のデスクまわりが居心地の良い空間に少しずつ変わりはじめています。また、社内のオープンスペースでは心地よいJAZZが流れたり、自社のフォトグラファーがプライベートで撮影した作品が飾られたりと、少しずつ社内全体が居心地の良い空間になってきていると感じます。

展望については、いくつかの視点から語る必要があります。まず、現在社会が抱える多種多様な問題の中で最も深刻なのが、人口減少問題です。2023年6月リリースのトップインタビューでお話しているように、この問題に対しては、多くの企業は当社と同じように「戦略的縮小という成長モデル」を描くようになると予想されます。しかし、こういった脅威の中においても、価値ある印刷物は残り、小ロット多品種・高品質の要求が伴うでしょう。そして、デジタル化やデジタルコンテンツに対するお客さま・マーケットのニーズがさらに高まっていくことは、当社にとって機会と捉えることができます。ただし、それは素人と一線を画す『プロ』としての価値が必ず問われるでしょう。つまり、常にお客さま・マーケットのニーズに対して的確にスピーディーに応える新しいサービス(革新)を、社内の知と力を結集して組織的にプロとして提供しつづけなくてはなりません。

そして、新フロットでは具体的には「①印刷工場をさらにコンパクト化して、小ロット多品種に対応しながら高品質を維持。同時に、企画営業部門・クリエイティブ部門を強化し、マーケットニーズに応える新しいサービスにチャレンジし、仙台マーケットにおける売上拡大を図っていく」「②先端のマーケティング学び、ヒアリング力を高め、お客さまの想いに寄り添いながら課題の発見〜解決を提案し成果を出していく」「③製品やサービスの付加価値を高め、「まじわり、かかわり、むきあい。挑戦する人・地域のオモイとコタエをはぐくむ。ともに歩み、ミライへ。」という新たな自社ブランドコンセプトをもって、「ユーモラス」なイメージで地元の印刷業界・広告業界・コンサルティング業界の中において圧倒的優位なブランドを構築し、仙台マーケットに展開していく」という3つの大きな展望を描いています」


今回の統合に先立ち「アシタミル。」と呼ばれる全社プロジェクトが進められていました。

阿部社長:「『アシタミル。』の旗印のもと、9つの実行施策がスタートしたこと、そしてその一つひとつの概要については、2023年6月リリースのトップインタビューでお話ししていました。あれから約半年が過ぎ、現状を振り返ってみると、9つの実行施策は計画通り推進されていると思います。2023年10月には、社内インナーブランディングが完了し、11月上旬には全社員投票を経て「FLOTの新しい意味」と「新ロゴマーク」が決定。さらに、2023年11月中旬に開催された「アシタミル・ディスカッション」第1弾には、社員の半数にあたる40名以上の参加者が集い、活気ある「場」が生まれました。こうして普段あまり接点のない社員同士のコミュニケーションが醸成され、さまざまな価値観がある中でおのおのがそれらを柔軟に受け入れ、少しずつですが社内が一体化していくのが実感できています。

すべての社員が、今回の統合、そして商号変更に少しでも関わることにより、この大きな変革を体感してもらい、この先の新フロットの将来を社員とともにつくっていきたいと考えています」


最後に、新フロットにかける、阿部社長の強い想いと意気込みをお聞かせください。

阿部社長:「私自身は入社以来、印刷物づくりが好きで、印刷業に誇りをもち、田宮印刷という会社に愛社心をもってここまで来ました。しかし、私たちは、お客さま・マーケットがどんな課題を抱え、何を求めているのかを追いかけなくてはなりません。すると私自身の気持ちや感覚と、お客さま・マーケットとのズレが生じていることに気づかされることが多々あります。社員とともに、そのズレを積極的に修正(変革)していきながら、お客さま・マーケットに応えつづけていきたいと考えています。

時代、マーケット、そしてお客さまが求めるものに対して、新フロットは社員がプライドをもってブランドの維持・向上をめざして、部門を横断してワイワイ、ガヤガヤとコミュニケーションをしている。それも、ライトに、カジュアルに、自由闊達に、新しい価値観をどんどん受け入れながらユーモラスいっぱいに……。そうしたマインドやスタンス、行動が、お客さまにも伝わる……。そんなイメージで、お客さま、地域の役に立てる会社にしていければと思っています」

今回の新フロット発足にあたっては、「FLOT」という最も象徴的な英文ロゴタイプも一新された。新しい社名、新しい組織、新しい展望、新しいイメージとともに、わたしたち株式会社フロットは次なる未来に向かって、いま走り出したのだ。

ここから、どのように変わることができるか、そして前進しながら大きく変わるために、どんなチャレンジをしていけるのか。すべては、新フロットを構成する一人ひとりの個性と行動力が、さまざまなカタチで有機的に組み合わさることにより、自らの可能性を存分に発揮できるかにかかっている。

アシタミルの目的

フロットの全社員が互いに理解し合い、尊重し、

一丸団結して新たな未来を創っていき、

経営理念である「私達は働き甲斐のある企業を目指します」

「私達はお客様の役に立つ企業を目指します」

「私達は地域に役に立つ企業を目指します」を、自信をもって宣言する。

阿部和⼈(あべかずひと)/株式会社フロット 代表取締役

⼭形県大石田町⽣まれ。⼤学卒業後、1988年⽥宮印刷株式会社へ⼊社。営業一筋。本社営業部⻑、仙台支店長、営業部門統括、常務取締役を経て、2019年6⽉⽥宮印刷株式会社の代表取締役社⻑に就任。多趣味。