2021.05.20

トップインタビュー vol. 3

「私達はお客様の役に立つ企業を目指します」に見えた 創業者のDNAと、いま求められる行動。

昨年のトップインタビューに引き続き、今回は経営理念の2つ目に掲げられている「私達はお客様の役に立つ企業を目指します」について、阿部社長に約1時間にもおよぶインタビュー取材を行った。一つひとつ紐解いてくように進められたインタビューを通して、そこにはどんな想いが込められ、そしてこの理念がどんなことを指し示しているのか、その詳細が明らかになった。


創業者 田宮五郎のDNA。

経営理念の2つ目の項目「私達はお客様の役に立つ企業を目指します」には、あらゆる企業にとって本質的な命題とも言える「お客様の役に立つ」という内容が掲げられている。当社においては、地域発展に心血を注いだ創業者の田宮五郎の想いが脈々と受け継がれ、この項目に如実に反映されている。

阿部「当社の創業者の田宮五郎は1865 年(慶応元年)に西村山郡河北町谷地で生まれています。田宮家は代々村役人を務めるのですが、田宮家12代目の五郎も役場書記などを歴任しています。役場の職務を遂行しながらも、五郎の頭には常に「地域発展」という四文字に対する、使命感のようなものがあったようです。

たとえば、「ぞうり表圧搾機」の発明も、そうした使命感の現れでしょう。当時農家の冬の副業として細々と行われていた"ぞうりづくり"を、なんとか主産業として高めたいと考えた五郎は、苦労の末、1889年(明治22年)に日本初の「ぞうり表圧搾機」を発明します。 この機械は翌年の第3回内国勧業博覧会で名誉褒賞を受賞し、専売特許も取得します。 こうして質が良く値段の安い「最上ぞうり」の製造は盛んになり、それに伴って流通量も増大し、その名も一躍日本全国に広まっていきます。「最上ぞうり」は、五郎が目指した地域の主産業にまでなったのです」

こうした創業者の功績は、田宮印刷の「創業100周年記念誌」でも紹介されているが、阿部社長の言葉を通して改めて触れてみると、田宮五郎のその生まれ持った強い使命感に加えて、「まわりの人々のために、地域を良くしていこう」という助け合いの精神を強く感じ取ることができる。この精神こそが、「お客様の役に立つ」につながっていく原点であり、脈々と受け継がれているDNAでもあるのだろう。そして、阿部社長は、田宮五郎らしいエピソードをもう一つ語ってくれた。

阿部「五郎はまた、学問に対しても広い視野を求めた人で、友人と共に英語を学習する「英学会」を起こしたり、「谷地読書協力会」を結成したりしました。 谷地読書協力会は、当時は少なかったであろう書物を幾人かで輪読しながら、郷土発展のため、中央の動きはもとより世界の動きにも目を向け、夜の更けるのも忘れて討論を続けていたといいます。 この読書協力会が元になり、後に谷地には山形県内初の図書館が誕生することになります」

田宮五郎の人柄が目に浮かぶようなエピソードだ。地域の人々が共に成長することで地域を底上げし、発展につなげていこうとしたように、田宮五郎が大きなビジョンを持って行動していたことが窺える。

このエピソードのように、活字に人一倍親しんできた田宮五郎が、事業としての活版業を始めたことは、ごく自然の成り行きであったのだろう。 そして、1907年(明治43年)に「田宮活版」は誕生した。


お客様の役に立つために。

田宮五郎が田宮活版を創業して110余年以上経った今という時代において、「お客様の役に立つ」とは、果たして具体的にはどんなことなのだろう。そして、私たち一人ひとりにどんな振る舞いや行動が求められるのだろうか。

阿部「お客様が描く想いと現状にはギャップがあります。 そのギャップを埋める過程において具体的な要望や課題が顕在化してきます。 その課題解決において、お客様のギャップを埋める手法は「印刷」にこだわることなく最適な解決方法を探し、組み立て、ご提案していきたいと思っています」

阿部社長によれば、こうしたお客様の課題解決や提案には、断らない姿勢や、ものにしていくためにチャレンジしていくマインドや行動が必要だという。たとえ自分たちがやったことがなくても、やったことがある人にお願いしてでも、自分たちが軸となりお客様の課題を解決することで、最終的に自分たちに帰ってくるものは大きい。そう、スキルアップや実績という形でしっかりと帰ってくる。こうしたチャレンジを続けてきたことで、いま目に見える形で成果が出ているという。

阿部「近年、インナー・アウターブランディング、WEB、動画をご提案する場面が増えてきています。常に結果を求められますので、良い成果を出すために組織力を生かして全力でお手伝いしていきたいと思っています」


自社に課題を課す。

お客様の課題解決への取り組みだけにとどまらない。さらに阿部社長は、「自社で課題をつくって、自社で解決していく」ことに力を入れている。自社に自ら課題を課して、社員といっしょになってチャレンジして、それらを解決した先には、確実な成長と変化があるという。この成長と変化により、自社のサービス領域が広がることは、すなわちお客様に提供する課題解決力の幅が広がることを意味する。

ここ数年の例で言えば、「ブランドコントロール・アドバイザー」「セールスプロモーション・アドバイザー」「ユニバーシティ・チーム」「プランニングノウハウ・コンサルタント」の育成や各種プロジェクトがこれにあたる。

阿部社長の中では、いくつもの“課題”が大中小渦巻いているという。「お客様の役に立つ」ことを見据えて、次はどんな課題を課していこうとしているのだろう。そして、それを社員たちが自らどのように解決して、田宮印刷・フロットにどんな変化をもたらしていくのだろう。

「お客様の役に立つ」ために切磋琢磨し、協力しあうその姿を見て、きっと創業者 田宮五郎はどこかで見守るように微笑んでいるに違いない。

田宮印刷周辺の風景

田宮印刷+フロットの経営理念

阿部和⼈(あべかずひと)/田宮印刷・FLOT 代表取締役社⻑

阿部和⼈(あべかずひと)/田宮印刷・FLOT 代表取締役社⻑

⼭形県大石田⽣まれ。⼤学卒業後、1988年⽥宮印刷株式会社へ⼊社。営業一筋。本社営業部⻑、仙台支店長、営業部門統括、常務取締役を経て、2019年6⽉⽥宮印刷株式会社および株式会社フロットの代表取締役社⻑に就任。多趣味。